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   自閉症

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自閉症は育て方の失敗や経験の不足でなるものではありません。脳のタイプにもとづく発達のかたよりです。自閉症というのは3つの特徴がセットであったら同じ名前をつけましょうという取り決めの診断名です。その3つの特徴をウィングの「三つ組(みつぐみ)」といいます。

Ⅰ.ウィングの「三つ組」

1.社会性の質的な差異

自閉症にみられる社会性の特徴は人とのかかわりが多い・少ないといった分量の違いではありません。確かに、低年齢では、あるいは合併する知能障害の強い場合は、あるいは自閉症のタイプによっては、人とかかわる分量自体が少ない場合もあります。しかし、自分が抱きつきたくなれば相手が嫌がっていても抱きつきにいく、見知らぬ人にも警戒心乏しく/相手の困惑にも気づかずかかわっていく、といった場合はかかわりの分量自体はむしろ多いといえるでしょう。でもそれらの行動は社会性の質的な差異を明確に示す所見です。
社会性の質的差異とは、相手にも都合のあることを知能年齢相応に気づき、相手を快適にさせることを自分自身も楽しく思い、その技術を自然に身に付けて相手とかかわりをもつことの困難です。場の空気を読んだり常識を獲得することの困難とも言えます。
社会性の発達に不得手があるからといって、社会的行動が取れるようになっていかないということではありません。お互いが快適に暮らすための振る舞い(=社会的行動)は教えていくことができるのですが、身に付け方の道筋=教え方のコツが違うということです。

2.コミュニケーションの質的な差異

自閉症のコミュニケーションの特徴も、言葉の遅れや視線が合わないといった「あるかないか」で判断できるような単純なものではありません。実際、言葉に遅れのない自閉症の人もたくさんいますし、誰ともどんな状況でも視線が合わない自閉症の子どもに出会うことはむしろ極めて稀です。
定型発達(一般的な発達)の子どもたちは相手に何かを伝えるために言葉を覚えていきます。つまり耳から記憶し口で再現できる言葉は、コミュニケーションのために用いられる言葉です。でも自閉症の子どもでは往々にして知識としてコレクションしている言葉数と実用に使われる言葉数にギャップがあります。視線で気持ちを伝えたり指差しで情報をやり取りするといった話し言葉以外のコミュニケーションにも「ある・ない」だけではかれない実用上の困難があります。あるいは情報をやり取りすることの便利さや楽しさやそれが期待もされているということ自体への気付きの薄い子どももいます。これらがコミュニケーションの質的な差異です。人に伝える意図をもたない独り言、気付いてもらうのを前提としたつぶやきでの意思表示、一方的な発話、言外の意味の汲みそこね、話題のかたよりやお決まりのフレーズ…。質的差異の表現型はさまざまで、話し言葉だけみてもここに書ききれないほどのバリエーションがあります。

3.イマジネーションの質的な差異

目の前に現実にはない事柄(もの・情報・可能性など)について頭の中で操作する能力がイマジネーションです。定型発達(一般的な発達)の子どもたちはイマジネーションを発達させることで、自分の予想していた事柄と予想外の現実との間にも共通項を見出して「そいういうのもありだな」と思ったり、その展開に至った事情を推測して納得したり、思いがけない展開の落ち着く先を予測して安心したりできる能力を獲得していきます。つまり、急な変更でも安心・納得したり予想のつかない今後を楽しんだりできるのはイマジネーションのおかげなのです。
イマジネーションにかたよりがあると、考え・行動・感情などのリセットが困難になり、柔軟性に乏しい行動パターンが示されます。譲れない決めごとや周囲に奇妙な印象を与えるほどの物や情報への執着といった表現型から、子どもの心をよく見つめていなければ気付かないような表現型(新しいことになかなか手をつけない、いつまでもぶつぶつ文句を言う、指示通りに行動するが精神的疲労が著しい、など)まで、あらわれ方が千差万別なのは他の「三つ組」の特徴と同様です。
自閉症の子どもは想像することが出来ないという意味ではありません。「あるかないか」といった量の違いではなく、その中身(質)が異なっているのです。自閉症でも原因を推測したり先を予測したりできる子どもも多くいますが、手ががりや考え方の道筋が異なっている(=教え方のコツが異なっている)のです。
遊びに関してもイマジネーションにかたよりがあると、知識を覚える楽しみや秩序を整える遊び(並べる・集める等)・繰り返し遊びを好むことがよくあります。ごっこ遊びが大好きな自閉症の子どもたちも少なくありませんが、空想の世界の発展のさせ方や楽しみ方が独特なのです。

Ⅱ.「三つ組」の具体的な現れ方はさまざま

繰り返し述べてきたように「三つ組」の表現型は年齢や合併する知能障害の状況・発話量・これまで接してきた情報・その子の好みや人となりによって千差万別です。子どもの行動を見てその奥にある「三つ組」に気付けるようになるには、大人の側に知識と練習が必要です(「三つ組」の具体例については研究所関連書籍「その子らしさを生かす子育て」をご参照ください)。
おとなに○○をしなさいと言われるといつも怒る子どもが「ひねくれ坊主のかんしゃくもち」なのではなく、イマジネーションのかたよりのために自分の行動や予定に急に介入されると混乱するのだ・そういう経験があまりにも多かったために介入されないように予防線を張っているのだとおとなが知っていれば(イマジネーションのかたよりがこうした表現型をとることはめずらしくありません)、本人の受け入れやすい情報(指示)の提示の仕方をしてあげることができます。
「三つ組」の表現型にはさまざまなバリエーションがあることを知り、わが子の行動を目の当たりにしたときにその意味を見抜いてあげられれば、あなたの育児と子どもの毎日は穏やかな楽しいものになっていきます。そのためには専門家(医師に限らない)の知識と客観的視点が役に立ちます。

Ⅲ.何歳になったら「三つ組」という視点からの支援を開始すべきか

同じ「自閉症」という診断名のある人でも、毎日の生活に手助けが必要な人もいれば、会社を経営したり大学の助教授をしたりしている人もいます。そんなに暮らし方に違いがあるのにどうして同じ名前でくくるのか、その目的の理解がとても重要です。それは「三つ組」があればその人の能力の発揮のさせ方や気持ちの安定のさせ方のコツがとても共通するからです。つまり自閉症という診断は、いま何をどんなふうにすればこの子(この人)の力が引き出せるか、心穏やかな毎日が送れるかというプランのための評価なのです。
「三つ組」があるかないかの判断は今すべきことを見つけるための判断ですから、「まだ年齢が低すぎて診断できない」「グレーゾーン」「ボーダーライン」といった専門家の言葉を受けて「審判の降りる日を待つ」といった気持ちで毎日を送るのは全くナンセンスです。医学的な診断の確定は確かにある年齢に達しなければ不正確なものとなります。でももし今「三つ組」がわが子にあると感じたら、将来診断名として確定するかしないかはさておいて、「三つ組」を前提とした育児の工夫を今日からしてみることをお勧めします。そのほうがきっと育児に手ごたえがでるはずです。わが子の苦労や努力がみえてきて、忘れかけていたあの愛おしさでまた胸が一杯になるはずです。

Ⅳ.医学研究のための診断名と臨床(支援)のための診断名

例えばWHO(世界保健機構)は2種類の診断の手引きを出しています。ひとつは診断基準(何が何項目あったらこの診断名とするというチェックリスク)が書かれている「ICD-10研究用診断基準」(表紙の色からグリーンブックとも言います)で、もうひとつは日々の臨床(支援)のために用いる「ICD-10臨床記述と診断ガイドライン」(チェックリスト方式のものはついていません、表紙の色からブルーブックとも言います)です。
どこかの国の自閉症に関する研究と他の国の研究で対象とする子どもにズレがあっては研究成果同士を比較することができません。ですから自閉症に関する医学研究を行う上では「どこの国の研究者がみても自閉症」という子どもたちだけを選び出すことが必要です。研究用診断基準の使用注意書きのにも、この診断基準は研究のためのものであって臨床上診断される群よりも狭い範囲の対象を選び出すように作られている、ということが明記されています。
チェックリストというのは、なんとなくそれさえ○×をつければ診断が行えるような錯覚を見た者に与える魔力を秘めたものです(実は○×を適正に付けるためには充分な臨床研修が必要なのですが)。日本では研究用診断基準だけが、その本来の意味を離れて、あるいはチェックに必要な臨床研修もなしに、安直に用いられている場合があります。これでは、診察の結果、必要な支援が必要な子どもと親から剥奪されてしまうという事態すら生じかねません。
アメリカ精神医学会は研究と臨床の両方に使用するための診断基準(DSM)を出していますが、これも研究を想定しているものですから(そして診断基準という仕組みそのものの宿命として)、臨床上活用する際には不都合を生じる場合もあります。例えばイマジネーションの特徴のために本人が困惑・疲弊していても、それが明らかな行動上の所見として現れていなければチェックされない(無いことになってしまう)という問題です。私たちは「三つ組」をセットでもっていない子どもにはいまだかつて会ったことが無いのですが、DSM診断基準上は「三つ組」のどれかが無しになってしまうことはしばしば経験します(研究機関としてのよこはま発達クリニックはDSMを用いています)。
自閉症スペクトラムの項で述べるように、私たち(医療機関・啓発機関としてのよこはま発達クリニック、啓発機関としてのペック研究所)は、「三つ組」がその人の苦労の原因になっていれば、あるいは「三つ組」の観点からバックアップすることがその人の技術を教えたり良さを引き出す上で役に立つのなら、そのように評価すべきだと考えています。
あたなに必要なのはわが子の発達をバックアップするための評価です。
この病院では自閉症と言われた、この病院では非定型自閉症と言われた、この病院では非言語性LDと言われた…あなたの子どもには「三つ組」の特徴がありますか? もし「三つ組」があるならばそれは必ず教育(支援)の切り口として/あなたの子どもの大切な強みとして活用できるはずです。医学界の混乱に、今あなたが付き合う必要はないのです。
わが子には「三つ組」という特徴がある。
あなたにはその事実だけが必要なのです。

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